SL冬の湿原号物語

  1. 第1章

    「SL冬の湿原号」
    誕生までの軌跡

  2. 第2章

    蒸気機関車の仕組みと
    機関士・機関助士

  3. 第3章

    標茶駅での
    SL入換作業

第1章 「SL冬の湿原号」誕生までの軌跡

プロフィール
1940年 川崎車輛(株)製造
1945年 朱鞠内機関区支区所属
1954年 長万部機関区所属(瀬棚線で使用)
1973年 最終全般検査(苗穂工場)
1975年 釧路機関区所属(標津線で使用・廃車)
1975年 11月、標茶町に無償貸与(展示用)
1998年 復元・着手(苗穂工場)
1999年 復元・完了(苗穂工場)
1999年 深川~留萌間でSLすずらん号として運行
2000年 釧路~標茶間でSL冬の湿原号として運行
  1. SLすずらん号への軌跡

    1998年11月27日

    標茶町・桜児童公園に静態保存されていた
    C11-171が苗穂工場に到着。

  2. SLすずらん号への軌跡

    1998年11月27日

    復元に向け苗穂工場内へクレーンで搬入。

  3. SLすずらん号への軌跡

    1999年3月10日

    検査を受けたボイラーが搬入される。

  1. SLすずらん号への軌跡

    1999年3月12日

    台枠に40トンのクレーンでボイラー取り付け。

  2. SLすずらん号への軌跡

    1999年4月8日

    台車に車体を載せる作業。

  3. SLすずらん号への軌跡

    1999年5月1日

    SLすずらん号として復活。運転開始。

C11 171号機のご案内

【復元までの経緯】

C11形機関車は、国産タンク機C10形の改良形として登場しました。C11 171号機は1940年に川崎車輛で製造。深名線朱鞠内機関支区に配属されました。その後、瀬棚線、標津線で活躍し廃車。1975年から標茶町の桜児童公園で静態保存され親しまれていました。1999年NHK朝の連続テレビ小説「すずらん」の放映を機に復元。その後、地元からの要望もあり、2000年1月から「SL冬の湿原号」として運行され、標茶町への里帰りが実現しました。

第2章 蒸気機関車の仕組みと機関士・機関助士

C11形機関車は、明治期の古いタンク機から21年ぶりに誕生した国産タンク機C10形の改良形として登場し、主に支線区の小単位列車の牽引を使命として、高速・高出力の性能を持った機関車として重用されていました。

―記号の意味―

すなわち、SL冬の湿原号を牽引するC11-171号機は
「動輪の数が3対、タンク機関車でC11型で171番目に製造された」ということがわかります。

SLが動く仕組み

  1. ①石炭を火室で燃やし、ボイラーの水を
    沸騰させ蒸気をつくる
  2. ②つくった蒸気を蒸気だめにためたあと、
    配管で加熱し、シリンダへ
  3. ③蒸気の圧力でピストンを動かす
  4. ④ピストンの動きを主連棒・連結棒で
    動輪に伝え、動輪を回転させる
冬の湿原号客室名称

【C11形式蒸気機関車 主要数値表】

車軸配置 1-C-2
シリンダ直径(mm) 450
ピストン行程(mm) 610
水タンク水容量(㎡) 8.5
燃料積載量(t) 3.0
最大長さ(mm) 12650
最大幅(mm) 2830
最大高さ(mm) 3900
動輪直径(mm) 1520
馬力(PS) 610

機関士・機関助士

機関士・機関助士・SL 
三位一体

通常SLは機関士と機関助士で運転します。機関士は運転及び運行に関するすべての責任者。機関助士は火室に石炭をくべたり等、運転をサポートします。SLは石炭を火室で燃やし、ボイラーの水を沸騰させ蒸気をつくってそれを動力として走ります。ですから、SLの機関士になるためには、1級ボイラー技士の資格を持ってなくてはいけません。さらに、「甲種蒸気機関車運転免許」試験に合格して、はじめて運転台に座ることになります。

三位一体イメージ

このカマ(機関車)は軽い割に動輪直径が大きく、
空転しやすい…

石炭のくべ方にも
熟練の技が求められる

SLは、機関士・機関助士・SLのすべてが協調してはじめて動き出します。ここでは、SLの心臓部である火室に石炭をくべる技術についてご紹介します。石炭を効率よく燃焼させ、最大限の動力を得るために、機関助士は運転中、以下の手順で火室に石炭を入れ続けます。

【投炭第1回目】

投炭第1回目

↑火室入口

火室

火室

【投炭第2回目】

投炭第2回目

第1回から第2回の数字順に投炭を行い、1行程とする。

釧路~標茶間往復96.2㎞―約1.5tの
石炭をくべつづけなくてはならない
機関士と機関助士、
SLとの阿吽の呼吸で峠を越える、
古より脈々と受け継がれてきた技術の見せ所

運転の山場 
急勾配15/1000
(せんぶんのじゅうご)
を制す

釧路発 SL冬の湿原号が釧路湿原駅を過ぎた頃、スピードがぐっと落ち、SLの鼓動がより激しさを増すポイントがあります。ここは、いわいる15/1000と呼ばれる急勾配の上り坂で、スピードの調整 が少しでも狂うと、車輪が空転してしまうことになります。この空転を避けるため、SLは速度を最適加減に落とし、車輪を少しずつ回転させてこの急勾配を乗り切るのです。機関士・機関助士の腕の見せ所とも言われるこのポイントは駅間で言うと、釧路湿原~細岡間。是非一度SLの鼓動に耳を傾けてみて下さい。

SL

第3章 標茶駅でのSL入替え作業

SL冬の湿原号は標茶駅に到着後、下りの発車時刻までの間にSLの『入換作業』を行います。
『入換作業』とは、通常SLの方向転換をするときには転車台が使用されますが、標茶駅にはその設備がないため、SLと客車を一度切り離し、下りの進行方向にSLだけを移動させて、再び客車に連結する作業です。
一連の作業の中には、ホーム上からご覧いただくことができる工程もあります。

  1. 機関車(SL)と客車を切り離します。

    ①機関車(SL)と客車を切り離します。

  2. 機関車だけを上り方面へ引き上げます。

    ②機関車だけを上り方面へ引き上げます。

  3. 引き上げている間、灰を落とす作業(缶替え)や給水を行います。

    ③引き上げている間、灰を落とす作業(缶替え)や給水を行います。

  1. 準備が整ったら機関車を下り方面に移動させます。

    ④準備が整ったら機関車を下り方面に移動させます。

  2. 下り方面の先頭客車になる5号車に逆向きのまま機関車を連結させます。

    ⑤下り方面の先頭客車になる5号車に逆向きのまま機関車を連結させます。

  3. 連結後、全組成で2番ホームに入線させます。

    ⑥連結後、全組成で2番ホームに入線させます。