EPISODE.5 ~2024~ AOMORI VS HOKKAIDO 青森県産ホタテ×北海道産タコ

青森のホタテ

青森の海産物のなかで、トップの水揚げ量を誇るホタテ。そのほとんどが、陸奥湾育ちです。
津軽半島と下北半島に囲まれ、豊かな森とつながる湾内で、植物プランクトンをたくさん食べながら成長します。
桜の咲くころからぐんぐん大きくなり、初夏、いよいよ旬を迎えます。

ホタテ

ホタテ王国はホタテ養殖の先進地

全国に名を馳せる青森のホタテ。主産地は陸奥湾です。古くからホタテが生息し、十数年ごとに大発生を繰り返してきたといいます。そんな自然発生のうえに成り立つホタテ生産は、変動が激しいものでした。安定的な生産は、漁業関係者の悲願。当時、研究は進められていたもののホタテの増養殖技術は、まだ確立されていませんでした。昭和30(1955)年代、私財を投げうってホタテ養殖の礎を築いたのが、平内町の漁師・豊島友太郎です。その後、世界初のホタテの人工産卵に成功した山本護太郎博士、稚貝の画期的な採取方法を考案した平舘村(現・外ヶ浜町)の漁師・工藤豊作の尽力もあり、昭和40(1965)年代、陸奥湾のホタテ養殖は飛躍的に前進しました。先人たちの苦労と不断の努力が、ホタテ王国としての青森を築きあげたのです。

ホタテの成長は貝殻に出る

貝類の貝殻には、「成長線」と呼ばれる筋が入っています。これは樹木の年輪のようなもの。ホタテも例外ではありません。貝殻をよく見ると、同心円状の筋があり、その数からおよその年齢がわかるというわけです。ホタテは、卵からラーバ(幼生)・稚貝・半成貝・新貝の過程を経て、成貝になります。初春に生まれ、海中を漂っているラーバを採取すると、養殖の始まりです。夏、1cmほどの稚貝に成長したら、養殖用ネットへ。翌年2月ごろ、貝殻の大きさが6cmを超えると、「かご養殖」「耳吊り養殖」という方法で本養殖に入ります。半年ほど経ったものが、半成貝(6.5cm〜8cmぐらい)。多くは、ボイル後に急速冷凍され、「ベビーホタテ」として出荷されます。さらに成長したものが新貝(10cm前後)、2年越冬したものが成貝(約12cm〜)です。加工用のほか、活貝として出荷されます。

ホタテの成長
焼きほたて

まるごと食べられて栄養たっぷり!

ホタテは、貝殻以外だいたいまるごと食べられます。いちばん大きいのが、貝柱。じつは閉殻筋という筋肉で、ホタテが泳いだり貝殻を閉じたりするときに使われています。貝柱に沿うようにある三日月状の部位が生殖巣で、オスは白色、メスは橙(だいだい)色です。それらを覆うように付いているひらひらとした膜が、外套膜。これはいわゆるヒモで、貝殻をつくったり泳ぐ方向を決めたりする働きがあります。二枚の貝殻をつなぐ蝶つがいの内側にある黒っぽい部位が、中腸腺。これは通称ウロといい、貝毒を蓄積することがあるため、食べられません。ホタテはおいしいだけではなく、栄養も豊富です。貝柱に多いタンパク質をはじめ、コレステロールを抑え、血圧を正常に保つといわれるタウリン、疲労回復に効くとされるビタミンB1、エネルギー源となるグリコーゲンなどが含まれています。

太宰治も食べた「貝焼き味噌」

陸奥湾の養殖ホタテは、漁師がエサを与えて育てているわけではありません。八甲田山系から流れ込むミネラル豊富な水が、良質な植物プランクトンを育み、それをホタテが食べて育ちます。だから、肉厚で甘みも旨みも強い!それでいてクセがないため、和食・洋食・中華どんな料理にも合う万能食材といわれています。まろやかな甘みを味わうならば、やはりおすすめは刺身ですが、加熱すると旨みが増すため、網焼きやフライなども味わいたいところです。青森を旅したら、ぜひ食べてみたい一品は津軽の郷土料理「貝焼き味噌」。大きなホタテの貝殻を鍋にして、出汁に味噌を溶き入れ、煮立ったところに具材を入れて、最後に卵でとじる料理です。昔は誰もが口にできる味ではなかったそうで、太宰治は『津軽』の中で、「卵味噌のカヤキ」への思いを綴っています。

貝焼き味噌

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北海道のタコ

北海道には全国一の漁獲量を誇る魚介がたくさんありますが、そのひとつがタコ。
世界最大のタコといわれるミズダコは、道内全域に生息しています。
なかでも有名なのが、函館市戸井地区。初夏、禁漁となる産卵期間を目前に控え、漁が大詰めを迎えています。

タコ

冷たい海に生きるミズダコ

タコといえば、本州では「マダコ」ですが、北海道では「ミズダコ」が主流で、水揚げされるタコのおよそ7割を占めています。冷たい水を好む寒海性のタコで、北海道周辺のほぼすべての海域に分布し、水深1mにも満たない浅瀬から、200m前後の海底付近にまで広く生息しています。季節によっても棲む場所を変えるといわれ、夏は、水温の高くなる海域を避けて沖の深いところへ。秋になり、浅瀬の水温が下がってくると、エサのとりやすい岸へと移動し、春までとどまります。この行動は、季節的な「深浅移動」と呼ばれています。ある調査によると、ミズダコのなかには津軽海峡を渡り、北海道と青森を行き来しているものもいるのだとか。この理由もまた、深浅移動によるものではないかと考えられています。

巨大タコは短い一生を全力で生きる

北海道ではおなじみのミズダコは、タコ類の中では世界一の大きさです。平均的なサイズでも、体重は15kg前後、腕を広げた長さは3mにも達します。じつに、軽自動車の全長くらいですから驚きです。一般的に、体の大きな動物は、小さな動物よりも長生きする傾向にあります。ところが、ミズダコの寿命はわずか3〜4年。タコ類のほとんどが1〜2年ほどしか生きられないため、長寿とはいわれますが、生物としては短命です。産卵も一生に一度だけ。オスは、交接といってメスに精子を渡すと、ほどなくして生を終えます。一方、メスは、産卵後6〜10カ月もの間、エサを一切とらずに抱卵します。懸命に我が子を守りつづけ、孵化を見届けると、最期のときを迎えるのです。

タコ
タコ

ミズダコなのにマダコとは?

北海道にはミズダコの産地として知られている地域がいくつかありますが、そのひとつが、函館市戸井地区。あの「戸井マグロ」「函館戸井一本釣活〆鰤」で全国に名を馳せていますが、昔からミズダコ漁も盛んなのです。函館市との合併前、戸井町だったころには、町の魚としてタコが選定されていたほど。ミズダコをモチーフにしたイメージキャラクター「トーパスちゃん」は、いまも健在です。そんなタコのまち、戸井地区では、大きなオスを「ミズダコ」、小さなオスやメスのことは「マダコ」と区別しています。とはいえ、小さくてもメスでもミズダコはミズダコ。本州で出回っているマダコとは別物です。異なるのは生息域。マダコは本州北部より南の沿岸をはじめ、熱帯・温帯海域に広く分布しています。体のサイズも小さめで、腕の長さを含めても最大で60cm、体重も2〜3kgほどです。

ミズダコを味わうなら
「タコしゃぶ」

ミズダコは漢字で書くと「水蛸」。文字どおり、水分を多く含むタコで、肉質がやわらかく、甘みが強いのが特徴です。刺身はもちろん、煮ても、焼いても、揚げてもおいしい! ミズダコらしさを味わうなら、しゃぶしゃぶがおすすめ。お湯にさっとくぐらせることで、甘みがより引き立ち、身のやわらかさとともにプリッとした食感も楽しめるのです。タコというと、足の部分を使った料理を思い描きがちですが、ミズダコは、足だけではなく、頭から内臓まで全身まるごと食べられます。ところで、「タコの頭」と呼び習わしている、あの部分は、じつは胴体。本当の頭は、8本足と胴体の付け根にあるのです。「タコの頭」すなわち胴体は、漁師イチオシともいう部位で、ほどよい弾力と旨みが堪能できます。

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漁師さんのインタビュー動画へ 平内町漁業組合 今光祐さん

陸奥湾の「平内ほたて」は、
とにかく甘いから
蒸しても焼いても旨い!

4月上旬、「養殖ほたて発祥の地」といわれる青森県平内町を訪れました。
ホタテの養殖にはいくつかの方法がありますが、平内町では「籠養殖」「耳吊り」が行われています。
その方法や「平内ほたて」の旨さのヒミツを探るべく、今さんにお話を聞きました。

陸奥湾って、どんな漁場ですか?

陸奥湾は、津軽半島と下北半島、平内町のある夏泊半島に囲まれた内湾です。北側の一部が津軽海峡とつながっていて、そこから津軽暖流が流れ込んで、湾内を回って、また流れ出ていきます。ただ、津軽海峡とは違って、潮の流れはわりと穏やかで、大きなシケもほとんどありません。
しかも、ブナ林が広がる八甲田山などの山々からミネラルたっぷりの水が流れてきます。その水のおかげで植物プランクトンが豊富で、それをエサとする魚介類がよく育ちます。

今光祐さん

陸奥湾のホタテの特徴は?

なんといっても、甘みの強さですね。どこのホタテよりも甘いと、自信をもって言えます。陸奥湾に流れてくる八甲田山の水って、飲料水としてもおいしいんです。その良質な水と、プランクトンがたくさんいる津軽海峡の海水のなかで育てるのだから、それは甘くて旨いホタテになりますよね。
もうひとつの特徴は、ホタテのサイズ。北海道のホタテと比べると、ひと回りくらいは小ぶりです。陸奥湾のホタテは、生まれてから2年以上の成貝よりも、1年から1年半ぐらいの半成貝(はんせいがい)の出荷が多いんです。だから、甘みが強いのではないかと、私は考えています。半成貝を蒸して急速冷凍したものが、「ベビーホタテ」です。これは、保存がきくし、料理にも使い勝手がいいとおもいますね。

ホタテ

ホタテの養殖について教えてください。

平内町は、「養殖ほたて発祥の地」といわれています。その昔、先人たちが苦労しながら、養殖の技術を確立させたそうです。いまや、養殖ホタテの生産量日本一を誇るまでになりました。
ホタテの養殖方法はおおまかに「地まき式」と「垂下式」があります。平内町では垂下式のなかの「籠養殖」「耳吊り」が多いです
私の養殖施設は、耳吊りです。どんな方法かというと——。ホタテの稚貝を養殖用ネットに入れて、ある程度まで大きくしたら、一つひとつの貝殻に穴をあけて、そこにロープを通し、15cmほどの間隔でつないでいきます。そのロープを何本もつくって、海中に設置してあるノシ(150〜200mの横に張ったロープ)に吊るすんです。海の中は、ホタテのカーテンが広がっているような状態になります。養殖とはいっても、エサはやりません。ホタテが自力で植物プランクトンを食べて育ちます。海のミネラルをダイレクトに吸収できるから、あんなに甘くなるのかなあ。とにかく甘くて旨いから、平内町まで食べに来てほしいです!

今光祐さん

イチオシの食べ方を教えてください。

おすすめの食べ方は、ストーブの上に乗せて、もしくはフライパンで、そのまま蒸す。それだけでもう旨いけれど、さらにニンニクと一緒にオリーブオイルでちょっと炒めて、鷹の爪と醤油で味つけして食べるのが、いちばん好きですね。もちろん、ニンニクも青森産ですよ。あと、マヨネーズと一味をつけたり、レモンをかけたマヨネーズをつけたりと、味変も楽しめます。いずれにしても、お酒のあてにぴったりですね。
家庭料理の定番といえば、「貝焼き味噌」。青森のソウルフードと言ってもいいでしょう。小さい子どもから年配の人までみんな、好きだと思います。ごはんのおかずになるし、お酒のあてになるし。ホタテがあれば「貝焼き味噌」にする家庭も多いんじゃないかなあ。
私がはじめてホタテっておいしいと思ったのは、バーベキューで焼いたホタテを食べたときです。こんなに甘いんだ!と、衝撃を受けました。だから、バーベキューにもホタテを用意してほしいですね。

貝焼き味噌
取材協力
平内町漁業協同組合
青森県東津軽郡平内町大字浅所字浅所91-56
Tel: 017-755-4111
WEBサイトを見る ▶︎
取材協力
森と川と海 ほたて広場
青森県東津軽郡平内町大字土屋字鍵懸 56
Tel: 017-752-3220
WEBサイトを見る ▶︎
ほたて広場外観 ほたて広場内観

津軽海峡の旨いは、
地元漁師に聞け!

青森の「ホタテ」、北海道の「タコ」
地元の漁師が互いの魅力を動画でご紹介。

漁師さんのインタビュー動画へ 戸井漁業組合 第十八 海成丸 成田博満さん

戸井の名産「ミズダコ」は、
身の締まりが抜群だから
「刺身」が旨い!

春の気配が漂う4月上旬、北海道有数のミズダコの産地、函館市戸井地区を訪れました。
タコ漁にはいくつかの方法がありますが、戸井では独特な仕掛けを使って漁を行っているといいます。
その方法や戸井のミズダコの旨さのヒミツを探るべく、成田さんにお話を聞きました。

津軽海峡って、
ミズダコ漁にとって
どんな漁場ですか?

ミズダコは岩場(岩礁域)に棲んでいるタコなので、漁場はほとんどが岩盤のある岩場ですね。主にこの汐首岬の沖合100mから120mのところで操業しています。潮の状態によっては4マイル(約6.4km)くらい行くことも。ただ、4マイルだとタコがかからないため、1.5〜2マイル(約2.4〜3.2km)ぐらいのところで獲っています。30年くらい前であれば、ここから40〜50mのところでも獲れたものですが。この前浜は、ほとんどが岩盤だからね。
もう30年くらい前、資源を守るために、2kg未満のタコに標識をつけて、そのタコがどこに移動しているかを追跡調査したことがあるんです。その結果、ここの津軽海峡のタコはほとんど地方へ移動しないことがわかって。この海峡で成長している。2kgで放流したものは、1年ほど経つと、大きいもので15kgくらいになるんですよ。

タコを掲げる成田博満さん

戸井の「ミズダコ」の特徴は?

戸井のタコはすごく身が締まっていて旨いといわれます。ミズダコが棲んでいる岩場には、カニはいないのだけれどエビがけっこういて、それを食べているからね。タコを獲ると、たいがいエビを抱いています。甲殻類のほかに食べているものといえば、大きな魚の食べ残し。津軽海峡に入ってくるマグロやブリなど大きな魚は、イワシなどを追いかけては食べている。その食べ残しが全部海の底に沈んで、タコのエサになるわけです。
この浜では、同じミズダコでもオスとメスで呼び方が違って、オスを「ショウダコ」、メスを「マダコ」と呼んでいます。マダコのほうが、身が締まって、歯応えがあっておいしいかな。ショウダコもしゃぶしゃぶにするとちょうどよい硬さになっておいしいと思います。春のタコはとくに身が締まっていておいしいですよ。
浜言葉で言うところの「メスのミズダコのマダコ」ではない、「南で獲れるマダコ」が、近年けっこう揚がるようになりましてね。僕らが子どものころなんて、ここで揚がることなんてなかったのに。年々、海水温が上がって、南のタコもけっこう北にのぼってきているのかなと思っています。

タコ

戸井のタコ漁について教えてください。

「漁り(いさり)」という仕掛けを使って獲っています。浮き玉(ブイ)1個につき漁りを1つ付けて、最大15個まで海に投入する。潮の流れを利用して獲るのですが、漁りが海の底にちゃんとついて、ちょうどよく流れていくように、重さを調整します。潮の流れが早いときは、漁りに付けているチェーン(重しのような役割)を足していき、逆に潮の流れがゆるやかなときは外したり。この感覚は個々の経験によるところが大きいですね。チェーンではなく、「やめ」で調整する人もいます。やめというのは、糸のことね。潮の流れが早ければ糸を長くしてみたり、長さで調整する。漁りは全部手づくりなので、ガラス玉を使う以外は、その人その人でつくりが全部違うんですよ。
昔は、浜で拾ってきた1〜1.5kgくらいの石と針金で漁りをつくったものでした。サメやカジカなどエサをかけてね。ところが、何日もシケがつづくと魚が全部腐ってしまう。そこで、エサを付けずに、擬似餌みたいにしてタコがつかないかって、みんな研究して研究して。その結果、このガラス玉にタコがつくことがわかって、このカタチになったんですよ。なぜガラス玉にタコがつくかというと、海の中に入れると光るから。タコは光るものに反応する習性があるのです。そこにタコがつけば、糸を引っ張ると重くなるので、機械で巻き上げます。根(海底の岩礁)だったら外れてしまう。

漁り

イチオシの食べ方を教えてください。

刺身ですね。刺身といっても、ここでは煮たもの(茹でたもの)を刺身といっています。みんなで集まって食べるときも、やっぱり刺身かな。戸井の水産物といえば、函館市と合併するまではタコが主流で、お歳暮は全部タコだったほど。どこの家でもタコを湯掻いて、それがお歳暮だったから。刺身以外では、唐揚げや酢の物、たこ焼きの具に使ったりもします。タコごはんもおいしいですよ。タコの内臓を鍋に入れて食べる人もけっこういます。メスのタコだと卵をもっているから、それをすり鉢で擦って、衣をつけて揚げて食べる人もいますね。
僕らが20代のころは、50kgくらいの大物が獲れていたのですが、いまは大きいタコがあまり獲れなくなって。たまに30kg台のものが揚がったりするけれど、あんまり大きいと食べにくいよね。足も太いから。そういうタコはしゃぶしゃぶに向いています。一番食べやすい大きさは、5kg、6kg、7kg、8kg……やはり10kg未満ですね。

刺身
取材協力
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北海道函館市釜谷町41番地
Tel:0138-82-2311-56

津軽海峡の旨いは、
地元漁師に聞け!

青森の「ホタテ」、北海道の「タコ」
地元の漁師が互いの魅力を動画でご紹介。

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