
津軽半島と下北半島に囲まれた陸奥湾は、魚介類の宝庫です。
知る人ぞ知るシャコの産地でもあります。
青森の春の味覚である陸奥湾のシャコ。
地元では、季節を感じられる珍味として、お花見の席で親しまれています。

シャコの英名は「カマキリエビ」
シャコは、茹でるとシャクナゲの花のような淡い赤紫色になることから、江戸時代には「シャクナゲ」と呼ばれていたそうです。それがいつしか転じて「シャコ」になった、というのがシャコの名前の由来とされています。英名は「Mantis shrimp(カマキリエビ)」です。シャコの姿形から名付けられたとあって、言い得て妙。見た目は昆虫に近いものがありますし、シャコの特徴である前脚(補脚)は、カマキリの「鎌」によく似ています。補脚は獲物をとるときに使う、いわば武器です。カマキリは鎌を振りおろすように使いますが、シャコは下からすくい取るように使って、一瞬で獲物をとるのだとか。補脚による攻撃力は非常に強く、貝やカニの殻を叩き割るほどです。そんなシャコは、内湾や内海の砂泥質海域に生息し、泥底にU字型の巣穴を掘って単独で生活しています。
シャコとエビは似て非なるもの
シャコは、一見するとエビに似ているので、地域によってはシャコではなく「◯◯エビ」と呼ばれています。たとえば、青森では「ガサエビ」というように。大まかには、シャコとエビは同じ「甲殻類」の仲間といえますが、分類上は別種の生き物です。シャコは「口脚目」、エビは「十脚目」に分類され、カニやヤドカリも十脚目に属しています。紛らわしいのが、「アナジャコ」。名前がシャコっぽく、見た目もシャコに似ていますが、エビと同じグループなのです。味はカニに近いのだとか。アナジャコは干潟に穴を掘って暮らしています。性格は獰猛なシャコとは違い、臆病でおとなしいといわれています。このアナジャコとシャコも似て非なるものですが、どちらも甲殻類。エビやカニなどの甲殻類アレルギーを持つ人は、アナジャコとシャコにも注意が必要です。


七子八珍のひとつ「ガサエビ」
青森では、「ガサエビ」と呼ばれているシャコ。県内では陸奥湾でしか獲れない貴重な味で、トゲクリガニとともにお花見の席で親しまれてきました。また、ガサエビは「七子八珍」のひとつでもあります。七子八珍とは、青森の新鮮な魚介類を「四季の味」としてブランド化したものです。七子は、晩秋から早春にかけて旬を迎える、すじこやたらこなど「子」が付く魚卵七品で構成されています。八珍は、季節を感じる珍味として地元で愛されている八品からなり、ガサエビも名を連ねているのです。近年、全国各地のシャコの産地では、漁獲量が減少傾向にあるといいます。飲食店などで以前のようにシャコを見かけなくなったという話もしばしば聞かれます。いまは、シャコに出会えれば幸運という時代になりつつあるのかもしれません。
シャコはシンプルに
「塩茹で」でいただく!
青森の春の味覚である陸奥湾のシャコ。この時期は産卵期にあたり、メスはお腹に卵をたくさん抱えています。オレンジ色の卵塊は「カツブシ」と呼ばれ、鰹節のような濃い旨みとプリっとした独特の食感が特徴です。身の甘さや旨さにカツブシの旨みも加わった旬のメスシャコは、格別の味わいで、高い評価を得ています。一方、オスのシャコは身そのものの風味をストレートに感じられます。シャコはクセがないので、さまざまな料理に使えるのも魅力です。酢の物や天ぷら、お味噌汁の具にも向いています。シャコのうまさをダイレクトに味わうなら、「塩茹で」がおすすめです。おいしく食べるコツは、なるべく早く茹でること。というのも、シャコは非常に鮮度が落ちやすいからです。できれば、生きているうちに茹でるのが望ましいといわれています。

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