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スペシャルインタビュー Vol.3 北海道の風土が本物の映画を創るスペシャルインタビュー Vol.3 北海道の風土が本物の映画を創る

東映株式会社
代表取締役社長 多田 憲之さん

Profile

北海道虻田町(現・洞爺湖町)生まれ。1972年、東映株式会社に入社。最初の赴任地であった北海道にて、28年間勤務する。北海道支社長、映画宣伝部長を経て、2013年、常務取締役に就任。2014年、代表取締役社長に就任。現在に至る。

北海道では役者さんが名優になる

東映株式会社 代表取締役社長 多田 憲之さんこれまで東映では約60本の映画を北海道ロケで製作してきましたが、やはり映画と北海道というのは切っても切れない関係にあると思います。まず北海道は四季がとてもはっきりしているということ。夏にはきれいな花が咲き、冬には雪化粧に覆われる。広大な土地は、画を大きく見せてくれます。そして私が一番決定的だと思うのは、北海道では役者さんが名優になるということです。寒いところで撮影をしますと、当然ながら役者さんの顔も厳しくなります。それがまた画になり、名優をつくっていく。またスタッフも、「北海道に来たからにはいいものをつくろう」と奮起しますから。かつて北海道を題材にした映画にも関わらず、予算の都合で、別の土地で撮影せざるを得ないことがありました。でもその違いは、どうしても画に出てしまいます。何よりお客様がわかってしまうのです。本物か、本物でないか。やはり映画というのは入場料金をいただくわけですから。映画人として嘘はいけない。本物を見せていかなければいけないのだと思いました。

東映株式会社 代表取締役社長 多田 憲之さん

『鉄道員(ぽっぽや)』の舞台、幾寅駅

東映映画のパンフレット東映はもとは東急の子会社ということもあり、映画には鉄道というのも欠かせない題材のひとつです。特に北海道では、白い雪に黒い汽車、真っすぐ伸びる線路に時を重ねた駅舎。それだけで趣きがあり、出演者の心情が伝わり、旅情も感じられるのではないでしょうか。その象徴的な作品が『鉄道員(ぽっぽや)』(1999年)です。撮影が行われた幾寅駅や、滝川駅付近の真っすぐな線路は、キャメラマンの木村大作さんが道内をくまなく探しまわり、やっと見つけたのが幾寅駅。線路と駅舎の高低差が決め手で、そこをつなぐ階段の昇り降りで歩く人の心情を映し撮れるというのです。主演の高倉健さんは、『網走番外地』(1965年)に始まり、北海道が似合う役者さんの筆頭だと思います。降りしきる雪のホームに高倉健さんが佇んでいるだけで、寒さが伝わり、さらに耐える男の心情までが伝わってくる。そして映画を観た方も、あの場所で、あの空気感を共有したいと思うのでしょう。映画公開した年は、幾寅駅を訪れた観光客の数が、ひと夏だけで約16万人。人口約3000人の町にそれだけの方が足を運ばれたわけです。かつては映画の撮影隊はあまり歓迎されない時代もありましたが、今はロケ地と映画、両方が盛り上がるような仕組みが出来上がっていると思います。

東映映画のパンフレット

出会いから生まれた、「北の三部作」シリーズ

『鉄道員』で強く印象に残っているのは、当時のJR北海道の坂本社長との出会いがあります。坂本社長はとても映画の好きな方で、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の副実行委員長もされていました。その社長に大変お世話になったのが、2003年に私ども含め映画会社3社で札幌駅に「札幌シネマフロンティア」(シネコン)をつくった時です。その際、当時の東映社長である岡田(裕介、現・代表取締役会長)に、「北海道の映画をつくって欲しい」というお話をいただき、誕生したのが『北の零年』(2005年)。映画の製作総指揮に坂本社長がクレジットされているのも、そういった理由からです。

『北の零年』から『北のカナリアたち』(2012年)、そして今春公開された『北の桜守』(2018年)と、「北の三部作」にご出演いただいた吉永小百合さんも、高倉健さんと双璧を成す、北海道が似合う役者さんのひとりだと思います。作品の舞台になる場所には必ず事前に訪れて、そこから役に対して感情移入されていくんです。地元の方とはパーティをしたり、一緒に写真を撮ったり。それはファンサービスであり、楽しみでもあったことだと思います。本当にすごい役者さんだと思います。『北の零年』のころ私は、宣伝も担当していた関係で、地元の皆さんとお酒を飲む機会もとても多かったです。「おらが町に映画が来る!」ということで皆さん非常に喜んでくださり、撮影現場では毎日炊き出しを行ってくださったほど。寒い北海道での温かい食事は本当にありがたく、何より皆さんとのほんわかとするふれ合いがとても嬉しかったです。

北海道は題材の宝庫、これからも本物を創り続けていく

私自身が北海道出身ということもあり、北海道を舞台にした映画はこれからも創り続けて欲しいです。やはり自分の故郷が映画になるというのは、誇らしいものです。まだまだ北海道には映画になる題材がたくさんあると思います。開拓の話や炭鉱の話、また樺太から引き揚げた方々も多いので、そういった歴史をきっちり描いていくのも大切ではないかと思います。ただ北海道を舞台にするからには、それなりの覚悟が必要なことも確かです。「活動屋殺すにゃ刃物はいらない。雨の3日も降ればいい」という言葉もあるくらい、製作費がかかります。それでも映画人であれば、本物を創っていかなければならないと思います。テレビやビデオの普及により、映画が凋落期にあった時代もありました。ただやはりテレビは日常であり、人々は非日常を求めて映画館に行き、真っ暗な中でじっとスクリーンに向かうのです。そして映画はエンタテインメントのひとつとして、絶対になくてはならないもの。そのためにも良品なものを、本物を創り続けるということが何より大事だと思いますし、その大きなウェイトを占めているのが北海道なのだと思います。

(2018年5月)

東映株式会社

住所/〒104-8108 東京都中央区銀座3丁目2番17号 
電話番号/03-3535-4641(代表) 
URL https://www.toei.co.jp/

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